赤ちゃんの肌はしっとりして瑞々しいですが、年を重ねるごとにお肌の水分量が減ってカサカサし、 しわが気になってきますよね。 この私達の体を潤している水分、体液のことを中医学では「津液」と言います。
前述の気・血と並んで私達の体を構成し、生命の維持に欠かせないものが「津液」であり、汗や唾液、涙などの流動性のあるもの、皮膚や筋肉、臓器の細胞内、関節 腔や髪の毛などを潤しているものすべてを指します。 中医学では体液の不足も疾患の原因のひとつであると考えているのです。
津液の代謝には多くの臓器が関係しますが、主に「肺」「脾(消化器系)」「腎」が深く関わっています。
その臓器の働きが低下してしまった時、むくみが生じたり、下痢をしてしまったり、目が乾いたりするのですね。
まずは津液の主な働きをあげてみましょう。
皮膚、臓器、五官、のどに潤いを与える
関節、じん帯、筋肉に潤いを与え、体の動きを円滑にする
血液は津液の一部から生成される
大まかにあげて津液は主にこれら一連の働きをしています。潤いがいかに大事であるか普段はなかなか実感できませんが、ただ肌が乾燥する、ということだけではなく、体の臓器や肉体がスムーズに活動するためにはなくてはならないものなのです。 3)は少し理解しにくいかもしれませんが、血液も体液の一部であり津液の一部が血を生むと考えられています。
津液の停滞あるいは不足が起こることにより症状が現れます。今回は津液の不足について学んでいきましょう。
乾燥の症状が主となる「津液不足」ですが、程度が進行しそれに熱症状が加わると中医学の専門用語で「陰虚(いんきょ)」と呼ばれる状態となります。
「陰」は水分をあらわしますので、陰虚とは冷却水が不足することにより見かけの熱(虚熱という)が発生した状態のことをいいます。 夜(陰の時間帯)になると手足がほてり布団を蹴ってしまう人はまさにこの状態ですね。
津液不足になってしまう原因は、汗のかきすぎや高熱、脱水、加齢、などです。 水分をあまりとらないから、という単純なものではありません。
陰虚の主な原因は寝不足(陰の時間帯に起きていることは陰の消耗につながる)や過労、加齢、性生活の乱れなどです。 その中でも寝不足、加齢は陰虚の進行に大きく影響します。 寝不足が続くと体は熱っぽくなり、またお肌がガサガサした経験がおありの方も多いのではないでしょうか。また、昔は冷え性だったのに今は暑がりに体質が変わったと言う方がよくいらっしゃいますが、それはまさに加齢により陰が不足したために起こった変化なのです。
また、前回お話した「血虚」タイプの方は同じ体液である津液も不足しやすくなりますので、治療しないで放置すると「陰虚」になってしまうことがあります。
では津液不足・陰虚の症状についてみてみましょう。下に並べたものは津液不足による症状です。
皮膚の乾燥 ・ 目が乾く ・ 口が渇く ・ 唇が乾く ・ 便秘 ・ 尿量減少 ・ 空咳がでる ・ 関節が動かしづらい ・ 関節の音がする ・ 手足のほてり ・ のぼせ ・ 体が熱い ・ 夜中の寝汗 ・ 微熱が続く ・ 舌は赤く苔がない、切れ目(裂紋)がある
よく誤解されがちなのですが水分を摂ったり、冷たいものを食べることでは津液不足が改善されることにはなりません。次のことを参考にして日常生活を改善していきましょう。
中国では「甘酸化陰(かんさんかいん)」といって甘いものと酸っぱいものを合わせて摂ると陰分が作られると考えられてきました。 実際に漢方でもこの考え方を元に生薬が組み合わされている方剤がたくさんあります。
日常手に入るトマト、レモン、梨、メロンなども、自然の甘みと酸味が備わったそれ一つで体を潤し冷却してくれる優れた食材なのです。
陰分を補う食材や、余分な熱を鎮める性質のある食材を多く取り入れましょう。
例)すっぽん、れんこん、百合根、梨、豆腐、きゅうり、トマト、白きくらげ、はまぐり、豚肉、鶏肉、なまこ、あわび、はちみつ、菊花茶、緑茶など。
避けて欲しいのは「刺激の強いもの、辛いもの」です。唐辛子やこしょう、ねぎ、辛み大根、にんにくなどは症状を悪化させてしまうので注意しましょう。